メールのマナーとは 2004.8.29

メールのマナーとは 2004.8.29

パソコン誌のライターという仕事柄、日頃メールやインターネットの使い方、マナーなどについては「教えてあげる」立場にいることが多い。ところが、ちょっと前、読者の方からメールのマナーについて指摘をうけるという「事件」があった。指摘の内容はというと、

受信メールで「宛先」欄に表示される名前に「様」をつけないのは失礼ではないか?

というもの。その方とは、何度かメールのやりとりをしたことがあったのだが、そのときに私が送ったメールの宛先欄に「様」がついていないということを指摘されたのだ。

ご存じの通り、メールの「宛先欄」には、相手のアドレス(aaaa@bbb.ne.jpのように)だけを入れてもOKだが、アドレス帳からメールを作成するとアドレス帳に登録したときの「名前」がいっしょに表示される。yuko nagaiのように。この「yuko nagai」の部分に様をつけろというわけである。

私が受信するメールの中には、宛先欄が「ビッケさん」となっているものがあって、これは古い友人(それも2名いる)なのだけれど、彼女らにとって「ビッケさん」までが1セットで私のニックネームとして定着しているせいかなと認識していた。だから、登録するときに「さん」をとって「ビッケ」って入力するのが違和感があったからだと思う(推測)。彼女たちが、他の人の分も全部敬称をつけて登録しているとは思えない。それとは別に、仕事でおつきあいのある男性編集者で「永井祐子様」となっている人がひとりいる。これは丁寧な人だなぁと思っていた。

でも、自分から「様」をつけようなんて考えたことは一度もなかった。それが「メールのマナー」だと思っていたから。アドレス帳はともかく、受信したメールの返信としてメールを作成したときには、相手が自分のメールソフトに設定している名前がそのまま入力される。私の場合は「Yuko Nagai」としてあるので、「(Yuko Nagai」となる。これが「永井祐子」としてあれば「永井祐子」となるわけだ。この場合は、手動でいちいち「様」入れて入れなくてはいけないということになる。

この問題を指摘してきた読者は、70代の女性で、お年にもかかわらず(失礼!)積極的にパソコンを使いこなしていらっしゃる。地域のパソコン教室などで講師をされる機会もあって、そのときには、「メールの宛先欄は封筒で言えば宛名と同じです。必ず「様」をつけましょう」と指導なさっているとのことだった。

長いこと、メールを使っていて、こんなことを聞いたのは初めてだったので正直ビックリ。改めて私のメールをあさってみても、先に書いた3人以外、「様」を付けている人はいない。「お客様」扱いされるはずのネットショップからのメールでも、そんなモノは一通もない。ちょうど夫がいたので聞いてみたが、「そんなの聞いたことない。相手が社長だろうが、取引先だろうが、「様」なんてつけないよ。」とのこと。

「メールの世界ではそうしない習慣です」と言ってしまえばそれまでだけど、マナーというのは「相手の不快にならないように配慮する」のがキホン。1億総インターネット時代(ほんとか)になって、いろいろな人がメールを使う今、昔からの習慣だから、というだけで片づけてしまっていいものか、とも思う。

そもそもメールが使われるようになった初期の頃は、通信コストが高かったし、通信網も今より脆弱で、極力通信量を減らさなくてはいけないという問題があった。だから、時候の挨拶とかよけいな文章は書かないとか、不必要な引用はしない、とか、そういうことが暗黙の了解=メールのマナーとして定着している。また、元々がアメリカで始まったモノだから、機能優先でシンプルにというのもあるのだろう。

でも、今となっては通信のコストや負荷の問題はほぼクリアされているわけで、必ずしもそれを守らないといけないという理由はない。もちろん、日頃何十通、何百通というメールを処理しなくてはいけないビジネスの場では、できるだけ簡略化するというのは理にかなっているけれど、そんなにたくさんのメールを書かない普通の人にとっては、お互いがそれで気持ちがいいのなら、長々と時候の挨拶を書こうが、全文引用しようが、まったくかまわないわけで。

肝心の「様」問題にしてもしかり。毎日たくさんのメールを書く人が、いちいち「様」を付けて書くのはたまったもんじゃないけれど、普通のお手紙と同じ感覚でメールを使っている人が「様」がついていないから失礼だと感じることもあるかもしれない。そういう人に対して、「メールのマナーはこうなんです」って決めつけてしまうのも、いかがなものかと思う。

結局、この読者には、「メールの世界では、一般に「様」をつけない習慣になっているので、何も考えずにそのまま返信してしまいましたが、不愉快に感じられたのであれば、配慮が足りなかったことをお詫びします」と謝罪した上で、「今までまったく思い当たらなかったことなので、そういう風に感じる方もいらっしゃるということを教えていただいて、勉強になりました」とお返事しておいた。嫌みにならないよう、気を付けて書いたつもりだけれども、やはりあまりいい気持ちはしなかたようで、「勝手なことを申し上げてお許しを」という恐縮された返信が届いた。「自分のところに届くメールも8割は敬称なしだが、たまに付けてくれる人を見ると、お人柄を感じます」とあった。

わざわざ「様」をつけるのが、丁寧な人と感じられるか、メールになれていない人と感じられるか。それは相手によって違うかもしれないけど(あるいは、まったく気が付かないか)、様をつけることにこだわっている人がいるというのは紛れもない事実なわけで。

それ以来、読者の方にメールを書くときは、気を付けなければと思って、しばらくは気にしていたのだけれど、すっかり忘れて最近はまたそのまま(^^;)。みなさんは、この問題、どう思いますか?
http://www.asahi-net.or.jp/~sq3k-ngi/

・あまり気にしていなかったがsoho検索、メンバーのエチケットで知った.